2022年度 野田清月/月例自選俳句 へ


2022年1月 野田清月の自選俳句

ひ孫抱く顔のほころび初写真
御福分なりし梅干大服茶
借景の木々蕭条と月冴ゆる
日を返す幸せの色福寿草
香煙をぬくしと思ふ初弘法
滝つらら浮世に妥協するきなし
新調の杖馴染みゆく春隣
  
<この月の出来事>慶応大は、人工多能性幹細胞から作った細胞を患者に移植する臨床研究を開始。
  

  2022年2月 野田清月の自選俳句

紅梅の香りを散らし雨意の風
機械音止りし亭午草萌ゆる
どの舟も足艪自在に若布刈る
皇子眠る山を煙らせ野火走る
鴬の出迎へありし二月堂
四手網揚げては降ろす夜もすがら
植木結ふ鋏急げる春時雨
  
<この月の出来事>俳人 稲畑汀子(91歳)さん逝去。

2022年3月 野田清月の自選俳句

実演の客寄せセール柳の芽
練切は桃の花てふ雛点前
雛に御意お供あられ賜ひけり
嬰児の乳乞ふ仕草山笑ふ
春の野に白毫寺あり奈良も果
地虫出づ二度と戻らぬ穴捨てて
畝ごとに息を吹込み耕運機
  
<この月の出来事>北京冬季パラリンピックで日本勢はメダル7個を獲得。
  

2022年4月 野田清月の自選俳句

電車待つ五分ばかりの花見かな
清水の舞台を天に花の雲
鮑海女波間にありし数呼吸
手秤に鬻げる蜑の鹿尾菜かな
騙された振りする二人四月馬鹿
春暁や茜ぼかしに郷土富士
越し方の真善美とは座禅草
  
<この月の出来事>秋篠宮さま 伊勢神宮(三重)、神武天皇陵(奈良)、明治天皇陵(京都)などを参拝された。
  

2022年5月 野田清月の自選俳句

朴咲くや回顧句友の在りし日々
通天橋辿る方丈若葉冷
すれ違ひならぬ吊橋渓若葉
一休を偲びし御寺若楓
定休日忘れてをりし街薄暑
若葉てふ個性競へる庭木かな
孩提にうかうか粽取られけり
  
<この月の出来事>岸田首相が「資産所得倍増プラン」打ち出す。
  

2022年6月 野田清月の自選俳句

子らに説く茅の輪くぐりの作法かな
風流の人の雅や御田祭
郷土富士映す代田に農夫立つ
焼鮎を喰むに長々釣談義
短夜や獏食ひ残す未完の句
俳句碑はいづこ徒歩路の風薫る
音羽山峰に重たき梅雨の月

<この月の出来事>東電管内「電力需給ひっ迫注意報」発令
  

2022年7月 野田清月の自選俳句

片陰に話を元に戻しけり
薬用の水生ぬくし熱帯夜
龍の目が動く天井堂涼し
小町の井囲ふ琅かん風涼し
野球子の目指す頂点梅雨明くる
扇子風少しいただく程の仲
祖父用は置場所異に天瓜粉

<この月の出来事>安倍晋三・元首相が街頭演説中に横死をされる。

2022年8月 野田清月の自選俳句

もうすでに鴉来てゐる草の市
我が庭の花鳥風月秋に入る
新涼や比叡の空に一穢なく
桐一葉落つるも己が影の上
余生とは引き算なりし桐一葉
植付けし母は遠忌に花茗荷
故郷はいつしか疎遠遠花火

<この月の出来事>高校野球104年目にして、初めて東北6県内から優勝校出る。  (仙台育英学園が優勝)

2022年9月 野田清月の自選俳句

夜長の灯ホ句の推敲ほしいまま
名月を正客の座に一と点前
疫ごもり三とせ過ぎゆく窓の秋
野のものに季語を巡らす秋の声
街騒をはなれし寺苑秋日傘
忌を修す読経唱和の露けしき
月の出を待つかはたれ銀沙灘

<この月の出来事>エリザベス女王 96歳 ご逝去

2022年10月の詠句 野田ゆたか

御寺訪ふ麓も峰も秋の風
横死者の来し方偲ぶ十三夜
弔砲の響く式典秋深む
禁酒てふ卓のさびしき秋の暮
秋惜む浦に海鳴り聞く夜かな
持て成しの花は残菊盆点前
清貧の八十路身に入む閨明り

<この月の出来事>プロ野球球団 オリックスがリーグ優勝・クライマックスシリーズ日本一に。

2022年11月 野田清月の自選俳句

一茶忌や米寿の俳師頼もしき
冬めくや月蝕赤く雲一朶
老の身に残りし野心帰り花
夕映に宇治の瀬波や紅葉散る
白波の水道に立ち冬の虹
時雨来て逆波走る竹生島
海峡に走る雲あり神渡

<この月の出来事>8日 この日、日本各地で皆既月食と天王星食が見られた。

2022年12月 野田清月の自選俳句

結界の老幹北風の鳴くばかり
漆黒の闇の賑はひ虎落笛
下車すれば音なき闇に霜の声
寒々と井戸覆われし珍皇寺
その命根っこに潜め菊枯るる
コロナ禍の答が合はず年の夜
糶られゆく大間鮪の高値かな

<この月の出来事> コロナウイルス禍 第8波治まらず。

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