2001年度 野田ゆたか/月例自選俳句 へ


  
2001年1月 野田ゆたか自選俳句

新世紀ビルのそびゆる初御空
初春の心添ひゆく新世紀
初戎どつと人出て新世紀
七種を祝ひ嘱託二年過ぐ
案の定乗換駅の雪しまき
朝の陽に踏む冬草の匂ふ道
寒牡丹鮮明にして阪神忌
  
<この月の出来事>東京23区で大雪警報。東京都心で8センチの積雪を観測。
  

  
2001年2月 野田ゆたか自選俳句

弔句添へ友見送りぬ春の野辺
夜べの酒残る雪解のしずく音
監視の目きびしく猫の恋ならず
仄かなる香をもて誘ふ月の梅
総会の準備こもごも梅蕾む
浅茅野の梅の木春を欺かず
薄氷を張替へ今朝の浮御堂
  
<この月の出来事>ハワイ沖で愛媛県立宇和島水産高等学校の実習船「えひめ丸」が米海軍の原子力潜水艦グリーンヴィルと衝突して沈没、
  

  
2001年3月 野田ゆたか自選俳句

幸せは近くにもある春野かな
浦風に乾く目刺の匂ひかな
楽しみはお伊勢参の帰路にあり
また会ひし早蕨の野のふたりかな
一歩より応へる大地青き踏む
訓練のヘリ浮上せり遠霞
晴るるとも見ゆる明るさ春の雨
  
<この月の出来事>東京スタジアムが開業。
  

  
2001年4月 野田ゆたか自選俳句

春潮や漁労会議は船の上
杜氏らに帰る日の来て花万朶
みどりの日想出とほく昭和古る
銃眼を花で覆ひて登城門
春愁の失せぬ開幕巨神戦
洲の柳白むは風の通る道
亀の鳴く静寂寺苑の夕まぐれ
  
<この月の出来事>三井住友銀行が発足。
  

  
2001年5月 野田ゆたか自選俳句

新緑を突抜けジェットコースター
顔見せぬ猿沢の亀若葉冷
少しづつ馴れきし夜目に新樹の香
恩光を花にとどめて山法師
足元に木漏日を敷き若葉風
哲学の道は軽暖水光る
新茶汲む形見の茶器でありにけり
  
<この月の出来事>大相撲夏場所で貴乃花が22回目の優勝。
  

  
2001年6月 野田ゆたか自選俳句

日の影を生みて葵の風変る
鳥居より来しだけ茂りゆくご陵
余業にも器用な男鰻割く
雨樋を直せぬまゝに梅雨に入る
青梅や月ヶ瀬茶屋の精進酒
六月の水位を上げて中之島
問診に鮎の釣果を問はれけり
  
<この月の出来事>札幌ドーム開業。
  

  
2001年7月 野田ゆたか自選俳句

城垣の石に西日の匂ひけり
御影堂廊下涼しき大庇
夕虹や画家が描たす泣黒子
歯科医師の手を止めさせし日雷
戻路は星に青田の匂ふ道
蓮咲くは早暁よりと聞きて来し
早暁を独り占めして蓮の花
  
<この月の出来事>宮崎駿の映画『千と千尋の神隠し』 が劇場公開。
  

  
2001年8月 野田ゆたか自選俳句

朝顔よ妥協をするな伸び止る
句を詠むは今も現役花茗荷
訃報受け白い稲妻脳頭に
星流れ離職の友のことをふと
織女星輝きてゐて嫁取す
音頭取被災を詠みて合掌す
霊園を一気に冷まし盆の雨
    
<この月の出来事>びわ湖タワー、行川アイランドが閉園。
  

  
2001年9月 野田ゆたか自選俳句

撫子や蛇の目の傘の似合ふ町
桃の皮きれいに剥けて西鶴忌
虫絶えてふつと夫婦の夜であり
コスモスや夜雨が色を新たにす
秋うらら紙飛行機を飛ばさうか
蓑虫や揺れてをりしは我が身かな
天平を千草に偲び奈良の町
  
<この月の出来事>東京ディズニーシーがグランドオープン。
  

  
2001年10月 野田ゆたか自選俳句

秋風や没日の音を聞漏らす
舞ふ鳶の乗換ふる風秋高し
火祭の尽きてようやく闇深む
火祭や里の篝火暮れてすぐ
湖風の立初め鳥の渡る刻
林檎剥く拇指でリズムを取りながら
稲雀攻めては退きて又攻むる
  
<この月の出来事>Windows XPがリリース。
  

  
2001年11月 野田ゆたか自選俳句

大根の煮えて頃よき日暮かな
未明より風を舞はせて神の旅
句ごころのモード切替冬立つ日
冬めくや木守れるもののみな落ちて
亜浪忌を城にあそべば木の葉散る
露天湯の星の稜線峨峨と冬
閑谷の杉あざやかに小六月
  
<この月の出来事>花咲風力発電所(根室市)が完成。
  

  
2001年12月 野田ゆたか自選俳句

おでん種揃へて孫の来る日かな
寒禽の庭に憩へる日和かな
拍子木の音跳ね返る寒さかな
鴨撃の人の足跡新しき
蕎麦喰みて義士討入の日と思ふ
笹鳴の所在葉ずれの音の中
除夜の鐘流れて闇の新たかな
  
<この月の出来事>Windows 95 のサポートが終了。